温泉

「万葉集」に詠われた関東一の古湯

今から約1300年前の奈良時代半ばに編さんされた万葉集には、愛媛県道後温泉、兵庫県有馬温泉、和歌山県南紀白浜温泉が九州太宰府に近い福岡県二日市温泉など選りぬきの古湯だけが登場しますが、東日本の温泉で唯一詠まれている温泉が『湯河原温泉』です。

湯河原温泉は「足柄の土肥(どひ)の河内(かふち)に出づる湯の 世にもたのらに 子(こ)ろが言はなくに」と詠まれています。
静岡との県境を流れる川に、こんこんと湧き出てゆらぐ湯のさまを、恋人の揺れ動く気持ちにたとえた恋歌です。
この歌は相模国など東国の歌を集めた巻十四に収められています。

江戸時代の温泉番付「諸国温泉効能鑑(かがみ)」では三役に入っています!

江戸時代、相撲の番付風に格付けした『諸国温泉効能鑑(かがみ)』では、数ある温泉地の中で『東の前頭』など3役を守った名湯です。

湯かけまつり は大名や御用邸に献上した古事が始まりです

『傷の湯』として名高い湯治効果のある『湯河原温泉』を、江戸時代の大名や御用邸などに運んでいました。
徳川時代を起源とする湯河原の代表的なお祭りに、今も毎年5月末に行われている『湯かけまつり』があります。
写真左は、温泉を大きな樽に入れ馬で運んだ献上行列の貴重な1枚です。

109本(2008年度調べ)の源泉、5種類の泉質を誇ります

湯河原の泉質は大きく分けて塩化物泉単純温泉硫酸塩泉の3種類。
泉質名では、数の多い順に次の5種類の泉質がそろっています。

①含石膏ー(弱)食塩泉(ナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩泉)

単純温泉 アルカリ性単純温泉を含む

含食塩ー石膏泉(カルシウム・ナトリウムー硫酸塩・塩化物泉)

含土類ー食塩泉(ナトリウム・カルシウムー塩化物泉)

石膏泉(カルシウムー硫酸塩泉)

5種類のうち、最も数が多く湯河原温泉の主泉質にあたるのは①の含石膏ー(弱)食塩泉が全源泉の半数近くを占めます。
次に多い②の単純温泉を併せると、全体の7~8割に及びます。
大きな分け方でいうと①と④が塩化物泉、②が単純温泉、③と⑤は硫酸塩泉に含まれます。
いちばん多い①の含石膏ー(弱)食塩泉と、三番目に多い③の含食塩ー石膏泉及び⑤の石膏泉は塩化物泉と硫酸塩泉に分かれていますが、ある共通点があります!
どれも石膏成分(カルシウムー硫酸塩)が含まれています。
これが名湯の誉れ高い湯河原温泉のカギとなる成分で、カルシウムイオンの鎮静作用が、痛みや炎症を和らげるため、高血圧症や動脈硬化症など、血管系の症状に効果があると言われ、 血管のトラブルを防ぐ効果がある「脳卒中の湯」とも言われています。